今年のM-1グランプリを見ていて、漫才の内容とは別のところに、ふと目が留まりました。
ヤーレンズの出井さんが締めていた、強い存在感のあるネクタイです。

調べてみると、それはヘラルボニー(HERALBONY)のアートネクタイでした。
一瞬のテレビ画面の中に、障害福祉と社会をつなぐ、象徴的な出来事が映っていたように感じました。
ヤーレンズのネクタイが持っていた意味
M-1は、お笑いファンだけでなく、普段テレビをあまり見ない人も含め、数百万人が同時に視聴する舞台です。
その場で、あえてヘラルボニーのネクタイを選ぶという行為は、単なる「おしゃれ」以上の意味を持っていたように思います。
ヘラルボニーのネクタイは、
- 知的障害・発達障害のある作家の作品を
- 正式な契約とロイヤリティのもとで
- “福祉商品”ではなく“デザイン”として届ける
そんな思想から生まれたアイテムです。
「かわいそうだから」ではない提示
福祉の文脈で語られがちな
「支援」「配慮」「善意」
といった言葉は、M-1のヤ―レンズの舞台には一切ありませんでした。
そこにあったのは、
“格好いいネクタイを締めた芸人”という、ただそれだけの事実です。
けれど、その背景を知った人が
「これ、ヘラルボニーなんだ」
と気づいた瞬間、見え方が変わります。
これは、
障害のある人が“守られる存在”ではなく、
社会のど真ん中で“選ばれる存在”として立っている
という、非常に強いメッセージでもありました。
M-1という“大衆文化”に乗った意味
もしこれが、
・福祉イベント
・アート展
・業界向けセミナー
だったら、届く人は限られていたでしょう。
しかし今回は、M-1グランプリです。
笑いのコンテストという、極めて大衆的な場に、
障害のある作家の“異彩”が、何の説明もなく混ざり込んだ。
これは、
「理解してください」でも
「応援してください」でもなく、
“もう、ここにあります”という提示だったように思います。
さいごに
ヤーレンズの漫才が面白かった
ヘラルボニーのネクタイも注目された
福祉を語らず、障害を強調せず
ただ“格好いい”として存在する。
M-1の舞台で結ばれていたあのネクタイは、
障害福祉が社会とつながる一つの、静かで強い形だったのかもしれません。

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